吹奏楽コンクール

吹奏楽コンクール 2016.09.10

【吹奏楽コンクール】本当に大切なことを教えてくれた花咲徳栄高校

吹奏楽コンクールもいよいよ大詰め。9月4日には群馬県のベイシア文化ホールで西関東吹奏楽コンクール・高校Aの部が行われ、埼玉県の伊奈学園総合高校、埼玉栄高校、春日部共栄高校の3校が全国大会に出場する代表校として選ばれました。

 

実は、大会が終わった後、ホールで一つのドラマがありました。

 

群馬県吹奏楽連盟の事務局長として会場にいらっしゃっていた高崎東高校の稲毛信哉先生がそのときの模様をFacebookに書き込み、それが先生の「友達(Facebook上のつながりのある人たち)」を中心に大きな感動を呼びいました。オザワ部長も思わず胸が熱くなった一人なので、先生の許可を得て、ある吹netに転載させていただくことにしました。

ぜひお読みください。

 

長文になってしまいますが、是非皆さんに紹介したいことがあります。

先日の西関東吹奏楽コンクール群馬会場2日目(高校Aの部)のことです。とても印象に残る光景を目の当たりにしました。

表彰式が終わり、ある程度出演者と一般のお客様がホールから退席したのを見届けてから、自分も中の状況を確認しようとホール内に入りました。すると、補助員をしてくださっていた健大高崎高校の生徒さんたちの他に、一生懸命にゴミを拾ったり座席のいすを元に戻してくださっている出演団体がありました。蝶ネクタイをした出演者の生徒さんたちに「どちらの学校ですか?」と訪ねると、とても良い表情で「花咲徳栄高校です。」と答えてくださいました。

実はこの大会の前に、縁あって一度自分も勤務校の生徒を連れてホール練習を見学させていただいていたのですが、演奏はもちろんのこと、その時の礼儀正しさや音楽に対する直向きさを見て、非常に勉強させていただいた学校でした。失礼ながら、質問したときに顔だけでは分からなかったのですが、学校名を伺ったときに、先生の熱心なご指導がこういう行動にまで伝わるんだな、と強く心を打たれました。

その後、ホール場内担当の先生が「もう片付いたので大丈夫です。ありがとうございました。」とお礼を言い、その生徒さんたちは自分の荷物が置いてある座席に向かって歩き出します。そして次の瞬間、生徒さん同士が互いに肩を抱き合いながら泣き出したのです。とても悔しそうな表情をしながら、そして仲間の肩を支えながら。

その姿を見た瞬間、自分も涙をこらえられませんでした。表彰式が終わって、きっとずっとそういう思いだったに違いない。でも、そんな素振りも見せずにみんなで一つになって、ホールの掃除、復元をしてくださった。そしてその仕事が終わった途端、自分の感情が抑えられなくなったのでしょう。顧問である川口先生のご指導が、単なる結果を求めるだけのものでなく、日々の様々なことを大切にしていらっしゃるのだろうと、生徒さんたちの行動を見ていて感じました。

大会に出れば結果は必ずつくもので、自分も何度となく悔しい思いもしましたが、その結果だけですぐに一喜一憂するのではなく、こうした周囲を気遣うことのできる心、そして仲間を想う心を大切にしたい。そう考えるとともに、自分も同じ指導者として川口先生のようにこうしたことを伝えられる指導者になりたい、そう学んだひとときでした。

花咲徳栄高校の皆さん、本当にありがとうございました。

 

この稲毛先生の文章を読んだとき、花咲徳栄高校を訪れたことのあるオザワ部長は、取材時に見た部員さん一人ひとりの顔や姿、笑顔が思い出されました。そして、彼らが一生懸命にホールの片付けをする様子、肩を抱き合って泣く様子がありありと目に浮かんできました。

 

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花咲徳栄高校の顧問である川口智子先生は、稲毛先生の文章を受けて、このように書いています。

 

「掃除したいです。」それだけ言いに来たんです。「行っておいで。」って言っただけなんです。

稲毛先生や群馬県の先生方が親切にしてくださったから、家族や先生が導いてくれたから、友だちが応援してくれたから、本気で頑張ったから、こんな気持ちになれたんだと思います。

生徒を支えてくださる全ての方に、深く感謝申し上げます。

 

コンクールはとても大切なイベントです。コンクールがあるから頑張れるし、成長のきっかけにもなります。とてもわかりやすい目標であり、指標です。そして、出場するからには、おそらくどの学校、どの団体も頂点である全日本吹奏楽コンクールを目指していることでしょう。高校で言えば、全国でたった30校だけが立つことができるステージを。さらに、その中でわずか8校ほどが手にすることのできるゴールド金賞という栄誉を。

花咲徳栄高校は、まさに真剣に、本気で、全日本吹奏楽コンクール初出場を目指してきた学校です。これまで、あと一歩のところまで迫りながらも手が届かないという悔しさを何度も味わってきた学校です。

 

dsc05275_2↑花咲徳栄高校の練習場に貼られている「代表になろう!!」「そして名古屋へ」の言葉と、“全日本”吹奏楽コンクールまでのカウントダウン。

 

今年、甲子園大会に出場した野球部を応援しながらコンクール曲の練習にも取り組み、埼玉県代表として西関東吹奏楽コンクールに挑んだ花咲徳栄高校。自由曲は高昌帥作曲の《吹奏楽のための風景詩「陽が昇るとき」》。結果は、見事にゴールド金賞でした。

しかし、代表校として名前を呼ばれることはありませんでした。

もしかしたら部員さんたちは心がずたずたに引き裂かれたような気持ちだったかもしれません。金賞を受賞した喜びの後にやってくる、代表になれなかったショック。その落差はあまりにも大きいものです。

 

そんな中で、なぜ花咲徳栄高校の部員さんたちは自主的にホールの掃除をしようと決めたのでしょうか。運営の先生方や補助員の生徒さんたちへの気遣いかもしれません。自分たちの精いっぱいの音楽が響き渡ったホールをきれいにして帰りたいという思いだったかもしれません。今まで支えてくれた人たちへの感謝が掃除という形になって表れたのかもしれません。あるいは、ただ仲間たちと一緒に「何かをしたい」という衝動に駆られたのかもしれません。

たとえどんな動機であったとしても、悔しさと悲しみのさなかで敢えてホールの掃除をすること、感情の渦に身を任せるよりもまず人を手助けし、人の働きに報いることを選んだ彼らは、美しく、崇高です。本気で真剣に吹奏楽に取り組んできたことが、そういう行動に結びついたのでしょう。

また、「掃除をしたい」という生徒たちの背中を押した川口先生も、温かい目で見守っていた稲毛先生たちも含めて、そのエピソードは優しさに満ちあふれています。

 

コンクールは大切なイベントです。コンクールに出るからには、結果が重要です。けれど、それがすべてではありません。では、何があるのか?

花咲徳栄高校は、一つの答えを教えてくれたような気がします。

 

花咲徳栄高校の皆さんへ、ブラボー!

 

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