吹奏楽コンクール

吹奏楽コンクール 2017.08.10

【東関東大会出場決定】横浜創英の自由曲《怒り〜広島に想いを寄せて〜》に注目!

本日8月10日に行われた神奈川県吹奏楽コンクール・高校A部門で、常光誠治先生が率いる横浜創英中学・高校吹奏楽部が金賞・代表・朝日賞に選ばれました。

 

横浜創英はこれまでも全日本吹奏楽コンクールで数々の名演を残してきていますが、今年注目したいのは、その自由曲です。

 

昨年のコンクール課題曲V《焔》の作曲者である島田尚美さんに委嘱して作られた《怒り〜広島に想いを寄せて〜》

 

この曲は、常光先生の体験と思いから始まり、それを島田さんが音楽として紡ぎあげ、最後に常光先生がタイトルをつけたのだそうです。

 

非常に気になるこの曲…。

島田尚美さんが横浜創英の定期演奏会のプログラムノートとして寄稿した文章の掲載許可をいただいたので、ぜひお読みいただきたいと思います。

 

 

私は戦争を知りません。原爆の音も形も風も…被害に遭われた方はどんなに苦しかっただろうか、どんなに熱く、痛かっただろうか…想像するだけでも胸が苦しくなります。

今回、常光先生よりご依頼を頂き、その原爆経験を伺えば伺うほど、その果てしない苦しみと怒りをどうやって音にするべきか—、正直、途方にくれました。

語り継がれるべき戦争、そして原爆の体験。私もまた、この世に生を受けたものとして、また人の親として、その物語を音楽の形で語り継ぐべきだ、という確かな意志の力を感じました。
冒頭は残酷な時間の経過を表した音楽です。爆弾が投下され、強烈な閃光が視力を一瞬で奪い、皮膚を焼き尽くす。爆音は鼓膜を破り、業火は罪なき人の体を、心を、すさまじい勢いで苛む。まだその時心臓は動いていたのでしょうか。

やがて始まる「子守歌」。この主題は様々な形で変容されながら、曲を推し進めていきます。

時には優しく、時には歪められ。

私にも子供がいます。よく子守歌を歌い聞かせました。きっと、かすかな命を伝えるものは、母の子守歌だったのではないか…そんな想い(願いと呼ぶべきかもしれません)が、この部分に込められています。
しかし、魂は彷徨う。なぜ自分たちは、失われなければならなかったのか。中間部分はそうした魂の彷徨(ほうこう)を表しています。怒りと嘆きと叫びをまとった魂はあてもなく流れ、広島を暗い暗い闇に落とします。
やがて、ハープとヴィブラフォンによる優しい音がその魂を救うが如く鳴り響きます。

そして物語は進みます。フラッシュバックの様に原爆を想起させる音響が何度かとどろきますが、しかし私は決して原爆そのものを描きたいのではありません。

核兵器の脅威を超えた、新たなる人間の営み、その息吹が、ドリア旋法によるメロディによって歌われ、力強い大きな光の様に全てを包み込みます。せめて、失われた魂が平和の息吹によって浄化されますように…。時に残酷なその響きは、新しい時代待ち望む切ない息吹でもあるのです。
時間と共に少しずつ風化されようとしている、広島原爆の記憶。

 

本日演奏される作品が、演奏される生徒さん、そしてお聞きになる方々に、語り継がれる記憶への、せめてもの悼歌となれば幸いです。

 

 

《怒り〜広島に想いを寄せて〜》はこれ以上ないほどに重いテーマと、そして、平和への願いが込められた曲なのです。

 

毎年夏になると、広島や長崎、戦争、平和を思わずにはいられません。

夏はただただ開放的でハッピーな季節ではなく、悲しみと痛みを思い出させる季節でもあります。

そんな私たちの心に、横浜創英の《怒り〜広島に想いを寄せて〜》はどう響くのでしょうか。

 

次に演奏されるのは、東関東大会の会場のよこすか芸術劇場になります。

審査結果がどうなるのかはわかりませんが、島田さんの文章を読むと、早くこの曲を聴いてみたい、また、多くの人に聴いてもらいたいと思わずにはいられないオザワ部長でした。

 


この3枚の写真は、数年前に広島を訪れた際、オザワ部長が撮影した写真です。フィルムカメラで撮ったので、レトロな雰囲気になっているかもしれません。

最後に出てくる折り鶴の「PEACE」ですが、改めて見てみると、作者は旭川商業高校の生徒でした。

旭川商業高校は6月に『吹部ノート3』の取材で訪れたばかりです。また、昨年は『吹部ノート2』で広島の修道高校を取材し、顧問の大咲先生のご案内で原爆資料館を見学しました。

 

島田尚美さん、横浜創英、広島、修道、旭川商業…。

いろいろなものがつながっていく、不思議な感覚にとらわれました。

 

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